佐藤陽一

痛みの先にある「やってみたい」へ。佐藤さんが目指す、運動だけではない関わり方

痛みの先にある「やってみたい」へ。佐藤さんが目指す、運動だけではない関わり方

さまざまな規模のジムで経験を重ね、武蔵境で3人までの少人数制ジムを営む佐藤陽一さん。痛みや不調の相談に向き合うなかで学んできたこと、今の形にたどり着くまでの歩み、日々の会話で大切にしていることを伺いました。

佐藤さんのプロフィール

スモールジム グランダ武蔵野弐番館代表トレーナー。総合型のフィットネスクラブやパーソナルトレーニング、少人数制のジムなどで指導を経験。2024年12月、武蔵境に同ジムを開業した。

佐藤陽一さんって!どんな人?

  • 目の前の人から学び続ける
  • 不調の先の「やりたい」を聞く
  • 暮らしの変化にも目を向ける
  • 人と人のつながりを大切にする

同じ「膝が痛い」でも、
一人ひとり違うんです。

同じ「膝が痛い」でも、痛みの感じ方も、普段の生活も、一人ひとり違います。前回はできたのに、今日は難しいということもあるんです。

仕事やご家庭の事情など、ご本人にもどうにもできないことはありますよね。そこまで全部変えようとするのではなく、「自分で変えられるところだけ、これを頑張ってみませんか」と、そのときにできることを一緒に考えています。

来ることに100%、
エネルギーを使ってください。

「今日も来たくなかった」って、冗談半分、本気半分でおっしゃる方もいるんです。でも、帰るときには「来てよかった」と言ってくださる。曜日や時間を決めておくことは、一見不自由そうですけど、続けることにはプラスに働いていると感じます。

だから皆さんには、いつも「来ることに100%エネルギーを使ってください」とお伝えしています。来たら、もう「自分は今日頑張った」と褒めてください、と。

来ていただいたら、こちらでその日の運動をサポートします。まず足を運ぶことを、一番大事にしてほしいんです。

この小さな場所が、
トレーナーとしての集大成です。

これまで、さまざまな規模や形のジムでトレーナーをしてきました。今の場所は、その中で一番小さな規模です。

「伴走する」と言うと、少し大げさかもしれません。でも、運動だけを見るのではなく、普段の生活も知った上で、その方と一緒に同じ方向を向いてサポートしていきたいんです。

時には一緒になって楽しんだり、僕ではない誰かとのつながりが生まれるきっかけをつくったり。トレーナーとしてだけでなく、人と人としての関わり方も含めて、今の形は自分がやっていきたいことの集大成になっています。

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大きなジムで感じた、力になれない悔しさ

トレーナーとして最初に働いたのは、ジムやプールなどを備えた大きな総合型の施設でした。当時は、ボディメイクやダイエットを目的に来られる方のサポートをしていました。

そうした方のなかには、途中で痛みや違和感を抱え、運動をやめてしまう方もいました。もちろん、医師に任せるべきことはあります。ただ、トレーナーとして関われる範囲でも、自分の実力不足で力になれないことがあった。そのことが、やっぱり悔しかったんです。

もう少し幅広く力になれたらと思い、勉強や経験を重ねながら、個人事業主としてパーソナルトレーナーをしたり、目的に特化した、より小さな規模のジムで働いたりするようになりました。

目の前の悩みに、自分の力を追いつかせる

その後、60代、70代の方々を中心にサポートするようになると、いただく相談も変わってきました。痩せたいということだけでなく、どこかが痛い、以前より身体を動かしにくくなった、健康診断の数値が気になる。そうした悩みに向き合うことが多くなったんです。

最初から、そういう相談をすべて想定して勉強してきたわけではありません。一人ひとりをサポートするなかで学び、また次の準備をする。今のサポートの土台は、そうした現場での経験の中でできていったと思います。

痛みの先に、やりたいことがある

お客さんからは、痛みや身体の不調によって、やりたいことを諦めた、できなくなったという話をよく聞いてきました。本当はこうしたいんだけどね、という気持ちが、その先にあるんです。

これまで関わった方のなかには、膝が痛いと相談に来られて、お話を重ねるうちに、お孫さんとボール遊びや追いかけっこをしたいのだと分かってきた方もいました。最初は膝の痛みの話だったのが、何のために身体を動かしたいのか、という話になっていくんですね。

痛みや不調への対応だけでなく、その先のやりたいことに結び付けられたらと思っています。もちろん、気持ちだけで何とかなるわけではありません。自分が関われる範囲で、できることを考えていきます。

できることが、人との関わりにもつながる

また以前、テニスをしていたけれど、コロナ禍で身体を動かす機会が減って、そのまま難しくなってしまった方もいました。その方が、ゆっくりでも友人とラリーを楽しめるようになったことがあります。

身体が動かしにくくなると、運動だけでなく、そこで会っていた人たちとのつながりから離れてしまうこともあります。もう一度できるようになったことが、次に何かをやってみるきっかけになるかもしれない。そういう広がりも含めて、サポートできたらと思うようになりました。

この場所を選んだ理由

今のジムは、有料老人ホームの建物の中をお借りして運営しています。路面店とは違う、新しい取り組みでもありました。いつまでも自力で動ける身体を支えたいという自分の考えと、この場所での方向性が合っていて、今までの経験を生かせるのではないかと思ったんです。

ただ、外からはジムがあると分かりにくいですし、夜の営業もできません。集客の難しさは、最初からある程度分かっていました。同じようにやっていても難しいなら、その環境に自分を合わせていこうと考えました。

身体を動かしながら、暮らしの話を

これまで、10人、5人といった人数でも指導してきました。今は3人までで、一人ひとりの状況を把握し、準備をしてご案内できる。人数の違う現場で経験した、よかったことも、うまくいかなかったことも、今に生きていると思います。

身体のことだけでなく、普段の暮らしも知っておきたいんです。生活のことを伺うときは理由をお伝えしますが、身体を動かしながらの何気ない会話から分かることもあります。ご家族や趣味、お仕事の一年間の行事まで、いつの間にか知っていたり。お孫さんの名前を、どうして知っていたんだろうと思うこともあるくらいです。

ここで、知らなかった楽しみに出会うことも

同じ曜日、同じ時間に顔を合わせていると、お客さん同士も少しずつ親しくなっていくんです。運動中のたわいもない会話から始まって、一緒にランチへ行くようになった方もいます。そうした楽しみを一緒につくっていけたらと考えています。

こちらから、新しい趣味をつくりましょうと言いたいわけではありません。ただ、ここで人や物事と出会うことが、その方にとって大きなものになるかもしれない。そういうきっかけが生まれる場所にはしたいと思っています。

ゴールを、ずっと追いかけていける

難しさもありますけど、それも楽しさなんです。ゴールはあるのに、たどり着きそうで、なかなかたどり着かない。ずっと追いかけていけるところが、自分の中では結構気に入っています。